3Dヘッドマウントディスプレイ『Oculus Rift』の周辺がもの凄く未来に生きてる件
海の向こうで開発が進んでいる3D表示に対応したヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」。Nintendo 3DSは常に3Dボリューム全開、今でも年に4~5回ほどバーチャルボーイを引っ張りだしてレッドアラームを楽しむ自分にとってはまさに「待ってました!」というデバイスです。去年の夏ごろに存在を知り、ちょうどその頃に行われたOculus Festival(以下「ocufes」)という実機体験イベントに単身で遊びにいってOculusRiftを初体験したんだけども、まぁこれが凄いのなんのって。
そして昨日(01/11)、秋葉原の「アキバ大好き!祭り」でもocufesが行われていたので夏以来の2回目の体験をしてきました。熱が覚めやらぬうちにこのメチャクチャ凄いことになっているOculus界隈の現状をざっくりまとめておこうと思います。
まずハードそのものの特徴を整理。
3D表示対応
Oculusに表示される映像は3Dです。
単なる3DだったらNintendo 3DSや、メガネかけて3Dが見れるテレビ、3D対応の映画館、3D映画も見れるソニーの新型ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T3」なんかがあるけども、Oculusはそれらのデバイスよりも3D空間への没入度がだんぜん違う!
見える範囲「すべて」を覆う、めちゃくちゃ広い画面(視野角110度)
現在出回っている3Dデバイスより没入度が多い理由がまずこれ。
3DSで体験する3D表示や3D対応テレビは、あくまで対応する画面だけしか3Dの仮想世界が表示されないので、その画面外は別の世界(現実世界)という感覚がごく当たり前に存在します。
続いて前述のソニーのHMDは「真っ暗な世界の中に大きな画面がある」という体験ができるんだけども、それもやっぱり「画面」と「画面外の暗闇」のふたつが存在することを脳が認識するので、どうしても映画館でスクリーンを見ているような感覚から抜け出すことができません。
ちなみにバーチャルボーイは「画面の境界線をゲーム内で描かない」「背景も描かないで暗闇にする」ことによって画面外の暗闇とゲーム画面の暗闇が同世界であるかのように脳を誤解させることに成功しているので、上2つのデバイスよりかなり没入度の高い体験ができます。
(このあたりはバーチャルボーイ開発者*1である横井軍平氏の「横井軍平ゲーム館*2」に詳しく載っています、読んでない開発者の人がいたらこの機会に是非、名著ですぜ)
で、本題のOculusはこの没入度をどう解決したかというと、ハード、ソフトの両面から「目で見えるすべての範囲が画面」という状態を作り、スクリーンを見ているような感覚にはならず、「画面」と「画面外」という意識が出てきません。さらに表示されている世界はしっかり3D表示されているので、とても自然に「画面に表示されている3D空間がすべてである」と脳が誤解をしてくれます。
この画面と画面外の感覚をがんばって例えてみると
- 3Dテレビなど・・・エンコード時に設定を間違えて、動画内の四辺ぜんぶに黒色の「額縁」が出ている状態でアップされている動画を見る。
- 一般のヘッドマウントディスプレイ・・・額縁のない動画をフルスクリーンで見る。
- Oculus・・・その動画を表示しているモニタ本体の外側が見えなくなるまで顔を近づけてる状態。
こんな感じでしょうか。
右を向いたら仮想世界も右を向く、超高精度のヘッドトラッキング
Oculus本体に搭載されている加速度センサーによって、現実世界の首の動きとOculusで表示されている仮想世界(画面)の動きが同調します。現実で右を向けば仮想世界でも右を見るし、左向けば左、上見れば上、下向けば下です。
で、このトラッキング機能の精度がまためちゃくちゃ高いので、仮想世界の没入度が圧倒的に高くなるんです。Oculusで仮想世界に入ったときにまず脳が誤解をする、という表現を使っていますが、このヘッドトラッキング機能で首をフリフリすると、「あ、やっぱりこっち(仮想世界)が現実でいいんだよね」と脳が誤解に納得するという感覚を体験できます。
トラッキングの精度に関しては、電気屋に行って、手持ちのスマホの画面と、10万以上する高価格帯のビデオカメラの画面でそれぞれカメラの向きを急に変えたときの差を見比べてもらって、高価格帯のほうの精度で仮想世界の画面がついてくる、と思ってもらえればおおよそ間違いないです。
脳が誤解した結果、平衡感覚が仮想世界の挙動に準拠するんです
平衡感覚が仮想世界の挙動に準拠するので、仮想世界で高いところから落ちるような映像を見るとこうなります。
(01:10あたり)
Jacob tries the Oculus Rift (roller coaster) - YouTube
これ、Oculusを体験する前は「さすが外人さん、大げさなリアクショだなぁw」って笑って見てたんだけど、スキージャンプゲーム高所から飛ぶ、立体機動体験ゲームで屋根にフック刺して高飛びする、そしてこのジェットコースターのような高所から一気に落ちる、という映像をOculusで見たら比喩じゃなく本当に腰が砕けかけました。*3今行われてるOculus体験ブースって立ったまま体験させるものが多いんだけど、安全面に配慮して高所体験ゲームはできるだけ座って体験させた方がいいと本気で思ってるくらいです(ちなみに初めて腰が砕けかけた時の体験を覚えていたので、今回の体験会での高所体験ゲームでは机に手をかけておく、足を踏ん張っておく、という動作を体が自然にやってました)。
Oculusの仮想世界をサポートするコントローラの充実度が凄い
次はOculusの仮想世界をサポートするコントローラ類の話。任天堂がwiiをリリースした頃から「いかに現実世界の体の動きをそのまま仮想世界に持っていくか」という試行錯誤を各ハードメーカーが行っています。これらのコントローラを有効活用することにより、現実からOculusの仮想空間への介入がよりリアルなものになるワケですね。以下いくつかご紹介。
- Kinect・・・「体全体の大まかな動き」を仮想世界にもっていけます。
Oculusを付けているプレイヤーが同じ仮想世界にいると、そのキャラクター同士で見振り手振りの挨拶ができるようになります。※この二人はVR空間内でハイタッチしています #ogjj pic.twitter.com/a4nskTPPA4
— Kenji Iguchi (@needle) 2013, 11月 10※この二人はVR空間内で抱き合っています #ogjj pic.twitter.com/TEy2wcqCkk
— Kenji Iguchi (@needle) 2013, 11月 10 - Leap Motion・・・「手と指の動き」を仮想世界にもっていけます。
仮想世界のおっぱい揉めます。
Oppai-motion - YouTube(技術的な説明はこちら) -
Razer Hydra・・・「腕の振り」を仮想世界にもっていけます。
wiiのリモコンプラスに搭載されているセンサーがwiiのヌンチャクに搭載されて、しかもそれがワイヤレス二刀流、というものですね。
仮想世界のミクさんに触れます。 - バランスwiiボード・・・「体重と重心情報」を仮想世界にもっていけます。
wiiFitからこのデバイスが出回ったので体重計をベースに発展系を想像しがちですが、このデバイスが一番活躍するのはなんといってもスキーゲーム!※動画最初の音量注意
Oculusを装着して現実世界を歩き回ると仮想世界でも歩き回る、という操作系は現時点では満足できるほどの精度は出ないため、仮想世界での移動は仮想世界上で飛ぶとか、滑るとか、勝手に動いてくれるものが向いてます。2014年1月11日時点ではwiiボード+Oculusの体験ゲームはまだ見かけたことはありませんが、既に対応しようとがんばっている動きがあるので、体験まではそう長い時間はかからないでしょう。
- スマートフォン・・・お手軽に「加速度情報」を仮想世界にもっていけます。
Oculus本体による「首の動き」と、スマホによる「体全体の向き」を別々に扱って仮想世界に活かすことができます。今日のocufesでは、ほうきの先にiPhoneを付けて、ほうきの位置情報を元に空を飛ぶというゲームが体験できました。
Oculus Witch - YouTube(技術的な説明はこちら) - 各種カメラ・・・お手軽に「現実世界の視覚情報」を仮想世界にもっていけます。
googleGrassのような現実世界を拡張するタイプと違って、Oculusは現実世界の視覚情報は完全にシャットアウトするので、何もしない限りは現実世界の風景を仮想世界に持っていくことができません*4。そこで市販のWebカメラ等を使って、現実世界の視覚情報を仮想世界にもフィードバックするという手法をとることになります。「ovrvision」というOculus本体に装着する専用カメラもあるようです。
これらのコントローラを駆使して、現実世界の挙動を3Dの仮想世界でも体験可能になるワケですね。デバイス全部組み合わせるとOculus越しに現実世界を見ている人同士が仮想世界のボールでキャッチボールをするという技術の無駄遣いもたぶん可能です。
開発の敷居が低い(Unityが対応、利用可能3Dモデルも多彩)
せっかくのデバイスでも開発環境が出揃ってないと普及に弾みがつかない、というのはわりと良くあることですが、ここ最近、3Dゲーム開発環境として流行しているUnityがOculusに対応しているため、開発も比較的容易にできるようです。
またMMDのモデルをUnityに持ち込めるツール別途あるので、ニコニコで踊っているミクさん達を簡単にOculusに連れて行くことができるみたいです。
Unityの参入障壁の低さは折り紙つきで、プログラミング未経験の主婦が1ヶ月かからずにミクさんをOculus上で躍らせることに成功しています。すげーw
【主婦ゆに!】「もしも、プログラミング経験がない文系の主婦がUnityをはじめて1ヶ月でミクさんを出してダンスさせることができたら」 - Togetterまとめ
まとめ
エロと軍事が絡む技術は進歩するなんていう話もありますが、Oculusの場合はエロも軍事も絡んできている*5ので、これからますます流行するんじゃないかなーと見ています。
今回、体験会で開発者の方が「今だったら何作っても世界初になれますよ!」という話もしていましたので、まずはUnityを触っておいて、もう少ししたら出てくる新型のOculus開発キット「Crystal Cove」の販売案内をwktkで待機してみようかなと思います!w
あとバンナムさんはプロップサイクル2って名前でOculusをアーケードデビューさせて!ゲーセン通って月5000円まで出すよ!w
*1:バーチャルボーイ開発者・・というよりも、『枯れた技術の水平思考』の言葉や、偉大なインタフェース「十字キー」の生みの親として有名ですね
*2:
横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力
- 作者: 横井軍平,牧野武文
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
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- メディア: 単行本
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*3:ニコニコで盛り上がってる「THE ジェットコースター」のトンデモコースターをOculusでやったら本当にゲロ吐く人が出るんじゃないかしらw
*4:Oculus製品版では実際の目の位置と同じ高さにカメラが付くという情報もあります
*5:エロは某3Dエロゲメーカーが開発キットを導入し、8月のocufes会場で微エロゲーを作成してましたw 軍事はNASAがOculus+Kinectでロボットアームを操作しようとしてます