他者に期待しないことは「他者を愚者のままにしてしまう罪」を犯している
先日、ホッテントリ入りした下記の記事を読んで思うところがあったので書いてみます。あ、フールプルーフはUIの書籍*1で言及されていたので知ってました。
先日辞めた会社で、アナログ管理されていた情報を集約する社内システム*2を作った時、利用者となる社員に対してまったくヒアリングをしなかったんですよ。
その理由は「ヒアリングは他者の時間を奪うこと。それは相手に申し訳ないからできるだけやりたくない」という利他的な思いもあれば、「ヒアリング相手がエクスプローラの操作方法にやや戸惑うレベルのPC初心者なので聞いてもムダでは・・」「うまく聞きだせる自信が無い」という悩みだったり、「システム完成後に『俺がアドバイスしたおかげでいいモノができたな!』とPC初心者にドヤ顔されるのが非常にウザい」という利己的な思いだったり。
んでまぁ、そんなこんなの思いから「聞くことはできない。だからその代わり、徹底的にUIを親切にすればきっと使ってくれるハズだ!」という考えに行き着いてしまい、意気込んで作ったはいいものの、その結果、UIは個人的には満足のいく出来栄えにはなった*3ものの、社員は当事者意識が持てないままシステムを利用することになってしまい、システムから提供される情報をがっつり妄信するしかなく、その結果、情報登録の際にミスが発覚すると、
「それくらい、システム側で想定しとけよ!」
という不条理な怒られ方をしてしまったワケです。
(こーいうミスが起こる可能性とか事前に聞かれなかったぞ!だから作ったやつが悪い!)とでも意訳すればいい所でしょうか。
ただ、もっとマズかったのは『他者に期待しない』という前提に立っていたため、
システムではチェックできない類の項目(例:登録者本人に決定権がある商品の発注数や、登録時点では登録者本人しか知らない情報など)が他の人のチェックによってミスだということが発覚したとき、直すときにまた変に間違えられても困るという思いから、「間違ってるから直してください」と修正を促すのではなく「間違っていたから正しい情報に直しておきました」という報告の形で運用してしまったこと。
この運用により、ミスった本人が「間違えても指摘してくれるからいいだろう」という依存体質になったらしく、後日トラブルが発生した時も『なんでチェックしてくれなかったんだよ!』と、チェックする人間に責任を押し付けるようになってしまった。そして最終的には、もう話をするのも怒られるのもイヤ。でもトラブルはもっとダメなので、また間違っている情報を見つけた場合は、本人に黙って、こっそり直す。報告もしない。間違っている本人は気付く余地もなく、自分の愚かさに気づけない。
そしてこんな状態は長く続くはずもなく、チェックする人間は精神的に病んでリタイア。チェックに頼っていた人達も半数はクビという、お互いにとって最悪の結末になりました。
自分「今作ってるシステムについて理解してもらうための資料を作りたいんですが」
上司「何でお前がそこまでやってあげないといけないんだよ!?」
自分「だってあとで質問攻めに合うのは結局私ですよ!(泣」
これは社内システム運用後の後日、また別のシステムを社内で触れてもらう前の、ある日の喫煙所での上司のやりとり。ここで作った資料はこの上司を通じて配布されたが、残念ながら興味を示してくれませんでした・・・
この件を思い返すと「他者に期待しない→他者のミスを防ぐように努力する→他者の失敗する機会を奪う→他者が失敗できない→他者が成長できない」「他者に期待しない→何度も同じことを聞かれても怒らない→他者は甘える」「他者に期待しない→ミスっても怒らない→他者は甘える」というように、他者に期待しないことは、その他者を愚者のままにして「成長の機会を奪うという罪を犯している」ということに最近になって気がついた。今回のケースでは、同じ会社で仕事をしている人の成長の機会を奪ってしまっている。結果的にその人が足を引っ張り、会社も成長しないという所に繋がっていく・・・これはダメだよね、という事です。
この最悪な結末を回避するためには、どんなに時間がかかっても、とにかく会話から始めることが大事だったんだな、と今は思っています。うまく伝えられないのであれば、自分の思いを適切に伝えられるように、その会話スキルも磨くこと。そして、相手が責任依存レベルで甘えるような状態になってくるようであれば、その時は「それはあなたの仕事でしょ」と、ちゃんと怒る、相手に不快感を示すこと。
そう思って、最近は会話スキル向上のための本を読んでます。*4。読んだ内容を実践できてるとはまだまだ言いがたいので、日ごろの会話から少しづつ鍛えていけたらなーと思います。UIにこだわるなら、人と人をつなぐいちばん手軽な会話というインターフェース手法にもこだわっていかなきゃね!
*1:
ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる
- 作者: サイトウアキヒロ,小野憲史
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 68回
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タイトルはちょっとアレですが、UI参考書としては超良書。スーパーマリオ1-1の優秀さや、FCの初RPGとなるDQ1の優れたゲームデザインなどにも言及してます。しかもフルカラー!UI本の原典とされている「誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論」よりも個人的にはオススメ。
*2:日単位のタスクに対して人をマッチングする機能を持ったスケジュール管理システム
*3:1.タスク毎に入力内容のテンプレートがある場合は確認ダイアログを表示後、OKで自動読込
2.Enterキーで次の入力項目にフォーカスを移す、サクサク入力支援。
3.任意の項目のテキストボックス上で内容の一部を入力すると、その項目に応じた入力候補をすぐ下に表示するサジェスト的な機能
4.日付入力にはカレンダーUIを表示
などなど、jQueryUIゴイスー。
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